日本におけるゴルフ場の多くは、運営資金の調達や安定的な集客を目的として、一定数の会員を募り、会員制を採用している。その会員権は、一度取得することで各種特典や利用権が提供される制度が広がっている。このなかで特徴的なのが「預託金制度」と呼ばれる方式である。会員がゴルフクラブに入会する際、入会金のほかに所定の「預託金」を預けるのが一般的である。これはゴルフ場運営会社への「貸付金」とも呼べる一種の保証金であり、会員は原則として定められた期間の経過後に、この預託金の返還を受ける権利を持つ。
ただし、入会金はいわゆる手数料や権利取得のための費用であり返還されないのに対し、預託金はゴルフ場としても本来返却義務を負う性質がある点が大きな違いである。預託金の金額や返還時期はゴルフ場ごとに異なる。契約時に「据置期間」が設けられていることが多く、多くは10年から30年間の据置期間経過後に返還請求が可能となる。会員が退会を選択した場合など、所定の手続きにしたがって預託金の返還請求ができる。ただしこの返還について、実際には「すぐに返してもらえるケース」と「期限が来ているのに返還がなされないケース」が存在する。
バブル経済崩壊以降、日本全国で数多くのゴルフ場が経営危機に陥り、経営会社の倒産や経営方針の転換によって、預託金返還トラブルが多発した。例えば、多額の預託金を集めたものの破綻し、返還が滞る事例が起きてきた。このようなケースでは、会員は預託金返還請求権を持つ債権者となり、会社更生や民事再生の手続きにおいて他の債権者と並んで弁済を受けることになる。ただし全額の返還がなされるとは限らないのが実情である。預託金制度に関する法的トラブルは複雑である。
多くのゴルフ場では、入会時に預託金に関する「会員規約」や「細則」が定められており、返還条件や据置期間、返還の手続きが詳細に記載されている。したがって、預託金の返還についてトラブルが生じた場合には、まず契約時の規約に目を通し、規定された条件を確認することが基本となる。また、返還請求の意思がある会員は、退会届や返還請求書の提出が必要な場合が多い。一方、運営者側は、運転資金や施設運営の潤滑な維持のために預託金を有効活用している背景があり、返還時期が集中すると資金繰りに窮することがある。そのため、返還期限を迎えた預託金の一斉返済に応じられないといった事態も発生しやすい。
裁判例などを見ると、「経営状況が著しく悪化したゴルフ場運営会社が、返還を分割で申し出た」「同意が取れずに返還を拒否され訴訟に至る」ケースも目立つ。ゴルフ会員権の預託金制度における返還問題が深刻化したことを受けて、関係官庁は指導やガイドラインの策定を進めてきた。もしもの備えとして、新規入会前にはゴルフ場の財務状況や未返還の預託金総額、将来的な返還リスクなどの事前確認が重要だとされている。資料開示や決算情報の公表など、運営の透明性を求める声も高まった。加えて、預託金の返還請求権は、原則としてゴルフ会員権そのものの譲渡に伴い移転することが多い。
そのため、中古の会員権を購入する際や、譲渡を検討する場合は、現時点での返還期日や未申請の返還有無、名義変更の流れについて把握しておくことが必須になる。譲渡時の旧所有者・新所有者間の権利義務の引き継ぎについても、ゴルフ場ごとのルールを確実に確認してトラブル防止を図るべきである。市場全体を見渡すと、預託金に代わって返還義務を伴わない「プレー権会員制」に移行するゴルフ場が増えてきた理由のひとつは、これまでの返還トラブルが経営悪化や顧客満足度の低下だけでなく、市場価値そのものの不安定化を招いてきたことにある。将来的なリスクや資産価値としての魅力が疑問視されたことによるものである。まとめとして、ゴルフ会員権の預託金制度は、安定した運営資金の確保という利点がある反面、返還トラブルや倒産リスクと切り離せない側面を有している。
入会時に十分な情報収集とリスクチェックが不可欠であり、万一の事態に備えて契約内容や返還条件を把握したうえで、手続きや退会、譲渡を進める判断力が求められている。日本の多くのゴルフ場では、安定した運営資金の確保や会員の囲い込みを目的として、会員権の取得時に「預託金制度」を導入している。これは入会金とともに一定額の預託金をゴルフ場側に預ける制度であり、据置期間後には原則返還請求が可能だが、経営側はその資金を運転資金に活用しているのが現状である。しかしバブル崩壊以降、多数のゴルフ場が経営難や倒産に見舞われ、預託金の返還が滞る、あるいは返還されないケースが相次いで発生した。この場合、会員は債権者として法的手続きを取ることになるが、全額返還は保証されていない。
トラブル防止策として、入会時に会員規約や返還条件を十分に確認し、退会や譲渡時にも適切な手続きを取ることが重要とされている。また、最近では返還義務を伴わない会員制度への移行を図るゴルフ場も増えつつあり、これは預託金返還問題が経営や市場に大きな影響を与えてきたことに起因する。今後もゴルフ場を選ぶ際は、財務状況や返還リスクの確認、契約内容の理解が不可欠であり、自身の資産保全のために慎重な判断が求められる。